孤独死の現場にもし遭遇したならば・・・

人の死は生きていく中で少なからずであることのあるイベントではありますが、昨今は孤独死や孤立死の現場というのが増加しているといわれています。
それらの現場の遭遇方法もまた、人それぞれです。身内や家族などの関係者として、もしくは家主として、近隣住民としてなど、それぞれの立場が存在しますが、一貫して「孤独死」ととらえた場合、その処理の方法はどれも共通する部分が多くあります。今回は、もしそうした現場に遭遇した際には、どうすればよいのかを参考程度ではありますが、ご紹介してまいります。

■もし現場に遭遇した場合は・・・


①現場を直視しない


 孤独死の現場は往々にして死亡直後の発見ではない可能性が高いです。つまり、ご遺体の腐敗が進んでいる可能性があるのですが、そうすると現場は日数がたつにつれて凄惨な状況になります。死臭と呼ばれる強烈なにおいの発生、ハエなどの害虫の大量発生、現場の汚染などです。これらは光景事態も凄惨であるのもそうですが、ハエや汚染状況というのは病原となる可能性が非常に高いのです。

 まずは現場を直視しないという点を挙げたのは先の精神衛生上の問題と衛生観念上の問題があるためです。凄惨な現場であればあるほど、これらの処理に慣れているとされている警察や特殊清掃業者なども堪えられないこともあるといわれるほどです。それらに対しての耐性がない一般人だとなおさらです。それに、予防策を講じないまま現場に突入してしまうと、感染症の危険性があることからも、素人がやみくもに現場に突入することは適切ではありません。

 もし臭いなどの様子から孤独死の可能性が疑われるようであれば、まずは自分で現場を見ようとはせず、警察に通報するようにしましょう。

②警察へ通報したら現場から離れる


 孤独死の現場は先述の通り、死臭が漂っていたり、病原体を持ったハエが漂っている可能性があります。そうすると近隣住民の身体的な心配も発生しますので、もしこれらの様子を察知して警察に通報できたら、なるべく現場からは離れて警察の到着を待ちましょう。
 簡単に流れを説明すると、警察による現場検証が行われ、ご遺体の移送が行われた後、遺族や大家が発注する特殊清掃業者の現場回復作業が行われます。この一連の流れを行うことで、防備をしていない人が現場に入っても感染症等のリスクをなくし、死臭の刺激を感じずに済むのです。ですが、孤独死の現場はあくまでも「変死現場」ですので、必ず警察の現場の確認が必要です。もとより、一般人ではショックが大きすぎて自分で処理しようとすることもそうそうないかと思いますが・・・。

 ただ、現場から離れるとは言いましたが、非難するようなことはなくても問題はありません。むしろ、警察へ通報した場合は周囲への混乱等を避けるためにも、通報者のみがいったん非難するので問題はないでしょう。大体の発見者は隣に住んでいらっしゃる方や訪問した方などが大半です。その人たちの個人的判断で近隣住民にまで非難を支持してしまうと、そこまでの規模の非難が必要ないにも関わらず大事になってしまうこともあり得ますし、不用意な噂話を掻き立ててしまうなどの、ご遺族へのダメージにもつながってしまう可能性もあります。
 それに、警察が到着した場合に事情聴取されるかと考えられますので、不用意に現場から遠く離れてしまわないようにするのが適切です。

③野次馬になるのは避けましょう


 火事や救急現場などでも同じことが言えますが、俗にいう野次馬になるのは避けましょう。理由は二つです。一つは、単純に故人やご遺族への配慮です。ご自身の身に置き換えて考えてみてください。最後の様子を興味本位でのぞかれていると思うといい気がしませんよね。もしすぐにご遺族が到着したとき、その現場を興味本位でのぞいている人たちがおおくいらっしゃると、どんな気持ちになるでしょうか。
 もしその現場に対して手を合わせたいという気持ちがあってそこに立ち入る場合は、すべての処理が終わった後、ゆっくりを合掌してあげましょう。

 そしてもう一つの理由というのは、警察や救急、特殊清掃業者の邪魔になってしまうためです。これらの現場はなるべく早急に処理をすることが必要です。近隣住民へのp死臭の到達を防止するためや、先述の感染症防止などの観点から、現場の早期処理は非常に重要です。その際に周りに人が集結していると、どうしても作業効率の低下につながります。そうした状況は早期原状回復に支障をきたしますので、それらの観点から野次馬になるのは避けましょう。

④生きているかどうかわからない場合は救急への通報


 明らかに孤独死現場だと判断できる場合は警察への通報が有用ですが、もし現場内の方が生存しているかわからない場合などは救急への通報が有用です。もし現場内の方がすでに亡くなっていた場合、救急から警察へ通報してもらえます。

・・・・・ご遺族向けの今後・・・・・

⑤特殊清掃の手配の要否を大家と相談する


 孤独死の現場は先述した通り、発見までに時間を要していることが多いため凄惨な現場になっていることがほとんどです。とは言えども遺族は遺品整理をするためにも立ち入らなければならないでしょうし、大家からしても次の借り手に物件を貸す際の現状復帰が必要になります。
 そのため必要になるのが特殊清掃業者による現場回復なのですが、大体の場合は遺族がいる場合は遺族が特殊清掃業者の手配や料金の支払いをするのが通常です。ただ、どうしても遺族がいなかったり、関係性が粗悪や絶縁の状態で処理ができないとされた場合は、最終的に大家がその依頼と費用の負担をすることがあります。いずれにしても必要な作業ではありますので、誰かが依頼をして、誰かが料金を支払う必要があるのです。

⑥遺品整理・遺品査定を利用する


 現場の原状回復が完了したら、次に行うべきなのが遺品の整理です、ここで二つの電卓氏があるのですが、一つは相続放棄の手続きを家庭裁判所で行い、そのすべての遺品を業者に処分してもらう方法です。そうすれば家具や衣類といったかさばるご遺品の処理を一括して行えます。もう一つは遺品の整理、つまり必要なものを相続し、必要ないものは不要物として供養や処分を行うものです。

 この後者の作業を行う際に有用なのが遺品整理士、遺品査定士への依頼です。遺品整理士とは、ご遺族の意向を考慮してご遺品の整理のお手伝いをする業者です。遺品査定士は、整理したご遺品の中からリサイクル業者などへ売ることで金繊に還元できるものの選別や鑑定、売買の手伝いを行う業者です。
 孤独死現場が増えているといわれている昨今では、遺品整理士や遺品査定士の需要は急増しているともいわれています。実際にご遺族だけですべての処理を行うのも非常に大変ですし、大切な方が亡くなった後だと混乱して、残しておくべきもの、そうでないものの判断が冷静につかないことも十分あり得ます。そうした時に、選別のプロに付き添ってもらうことで本当に必要な判断を行うこともしやすくなりますし、ご遺族自身にとってもグリーフ・ケアともなることでしょう。

■孤独死の清掃費用の相場

 どんな事柄にも相場が存在するように、孤独死の現場清掃にも相場が存在します。それこそその費用の上下はピンキリで、金額だけで業者を選別すると、粗悪な業者に当たってしまうことも残念ながら考えられます。ここでは、そうした粗悪な業者に当たらないための相場の確認と、それに対する根拠や理由を述べていきたいと思います。

①特殊清掃の費用の相場は?


 特殊清掃の相場と一言で言ってもその現場の状態や依頼する処理内容によっても金額がかなり変動します。大まかに挙げられる特殊清掃の工程は以下の通りです。

 ①汚物等の除去作業
 ②汚染個所の撤去作業
 ③ウジ・ハエなどの害虫駆除
 ④プラズマオゾン脱臭
 ⑤消臭剤・消毒剤の散布

 これらの作業を経て現状回復を行っていきます(もちろん細かな部分ではこれ以上の作業が存在します)。原則的にはこれらの項目の中で必要な実施項目をピックアップし、部屋の広さや状態に応じて見積もりがなされていきます。そのため、相場とは一言で言って例えばワンルームの狭い部屋と2LDK で一部屋も広い部屋とでは価格もかなり変わってくるのです。

 それらを想定して見積もりの相場を上げるとするならば、比較的安いとされる業者の場合は30,000円~300,000円とされています。これが一般的な相場で見るならば700,000円~1,000,000円程度とされています(残置物無しの撤去作業込みの場合)。

 まずなぜこれだけの費用差が発生するかの背景を考えるべきですが、おおよその場合、設備の安価さや専門技術の低さが挙げられます。例えばですが、消臭剤一つにしても業者側が安価な薬剤を選択していることで、効果が薄い可能性が高い反面、コスト面を抑えているので金額面で反映しているという可能性が高いです。ですが、一般相場内の業者の場合だと、効果が高いと判断されるのならば、高価な薬剤の選択もやむなしとしています。これは、実際に施工した際の効果が薄く、さらに別の業者に依頼をしなければならないなどの手間を最大限防止するためともされています。

 そのほかにも、オゾン脱臭機の数が安価な場合は1~2台の準備に対して、一般的には空間の広さにもよりますが3~4台は用意するといわれています。台数がそろっていればそれだけしっかりとしたオゾン消臭の効果が発揮されます。

 あとは搬出用トラックが1~2台のみで、全搬出を想定しない台数しか用意しなかったり、作業要員があまりにも少なかったりといったように、明らかに費用が低価格の場合はそれなりの理由がついてくるものです。ですが、往々にして金額=作業量・効果とは言えませんが、あまりにも安価な場合、結果が伴わないというようなクレームなどにつながっているのも事実です。つまり、安ければどこでもよいということではなく、安いならば安いなりで「なぜ安いのか?」とかを考える必要もあります。

②見積もりを出してもらうときに詳細もしっかり確認しよう


 先述のように、金額が安いなら安いでその理由がありますし、高いなら高いでその理由がしっかりあります。ですが残念ながらどんな世界にも存在するように悪徳まがいな営業をしている業者も少なからず存在しており、それらの業者を誤って選択しないようにしなければなりません。

 そのための重要な判断材料となるのが、見積もりです。先のとおり見積もりの安い・高いはその中の品質に依存するといっても過言ではありません。そのため、どのような項目にどれだけの費用が発生しているのかをしっかり把握することで、その業者に対する信用性があるのかどうかを判断することもできます。
 ただ、とはいっても初見だけでは何に対していくら発生しているのが通常の見積もりなのかを判断することは非常に難しいことかと思います。そのため、先述と同じ内容にはなるのですが、しっかりと複数の見積もりを取ったうえで判断をすることが必要です。もしくはインターネットのレビューなども多数上がっていますので、その中から自信が信頼できると判断した業者を選ぶのも一つの選択方法です。

③ホームページをしっかり見てみよう


 孤独死が社会現象になってきている昨今、遺品整理士や特殊清掃業者の需要は非常に高くなってきています。それだけに業者の数もここ数年で非常に増えてきており、利用者はその中から自分自身のコンセプトや信用度に見合ったと思える業者を選ばなければなりません。
 その選択水準に対して非常に有用なのがホームページです。ホームページはいわば業者の顔ともなりますので、そこでしっかりと宣伝と料金目安、方向性、過去の事例などを取り上げている業者が信用できるといえましょう。
 特に注目していただきたいのが過去の活動歴の情報です。今までどのような現場を担当してきたのか、その現場に対してどのように対処してきたのかを知ることで、その業者に任せられるかどうかの材料とすることもできるでしょう。

■特殊清掃業者の選び方


 先の項目で少し触れてはいるのですが、費用の相場だけではなく、どのようにしてその業者を信用し、選択するかというのも非常に重要な事柄です。個人の最期の思い出がたくさん詰まった現場をおざなりにするような業者に、果たして遺族として依頼をしたいと思うでしょうか。大方否と帰ってくるでしょう。そのため、そうした状況や背景に対して親身になって対応してくれる業者をどのようにして選べばよいのかどうか、先の費用の点も含めてもう少し掘り下げていきたいと思います。

①しっかりと話を聞いてくれる業者


 こんなこと当たり前、と思うかもしれませんが、これは非常に重要なコンセプトです。遺族側からすれば依頼の数はあっても数える程度でしょう。ですが業者側からすれば毎日毎日過酷な現場と直面しています。利用者側からすれば本当に過酷な現場に臨む姿には頭が下がる思い出はある反面、どうしても現場に慣れ切ってしまい対応が粗雑になってしまう業者もあるのも事実なのです。
 そのため、しっかりと一件一件しっかりと、丁寧に対応してくれる業者か同課を選別するためにはまず、依頼者の話をしっかりと注意して聞いてくれる担当者がいる業者なのかどうかというのが判断材料となるのです。これまでの事情や背景、どんな品は残したいのか、そのほかの不用品は処分したいのか、リサイクルしたいのか。細かく聞いてくれるくらいの業者のほうが仕事は最終的にすごく丁寧です。

②安かろう=よかろうではない


 先の見積もりの件でもお伝えしていることではありますが、決して見積もりが安いからと言ってそれだけでいいという判断は禁物です。見積もりが通常相場とされる金額より仮に安いということは、それだけ何かしらの費用をカットしているということですし、そのカットが善意によるものであれば幸いですが、先述のとおり、本来あるべき設備や機材を少数にした結果値引きをしているのでは、最終的に現場の原状回復の不足からさらに施工が必要になるということも考えられ、実際にそうした問題は発生しています。

 特に賃貸物件での特殊清掃で、遺族側が業者に依頼した場合、大家との原状回復状況に対しての折り合いが合わないといったような問題も発生する可能性もあるため、場合によっては見積もり判断の際には大家にもその内容を吟味してもらい、しっかりと判断いただくのも失敗しない一つの方法でしょう。

③見積もりは必ず複数取ろう


 先の二つの項目のとおり、見積もりも判断材料として重要な情報です。作業内容の確認、作業内容に対する機材や人災の数が正当かどうか判断、賃貸の場合ならばその作業内容が物件の現状回復において不足ないかどうかの判断を行うためです。
 ここで判断材料としてもう一つ見ておきたいのが、「あとから見積もり内容以上の作業をどんどんと追加するような業者かどうか」です。特にこれは最初の見積もりが安い業者に見られる特徴のようなのですが、最初は選んでもらうために見積もりを安く設定するのですが、どうしても作業工程上項目を増やさざるを得なくなり、最終的には最初の見積もり通りの金額では完了できないというケースもあるようです。当然、現場の状況によっては見積もり段階だけでは判断できない作業工程もあることでしょう。ですが、信頼のおける、現場の場数を踏んでいる業者であればある程度の目安を立てることはできるはずです。

 とはいっても、作業に入る前から見積もりを見ただけで「あとから作業項目が増やされるかどうかなんて判断できない」と思われるでしょう。実際に、何の情報も無しで見積もり金額を見ただけではそうでしょう。そんな時に大事なのがインターネットなどの口コミやレビューです。中にはステルスマーケティングも含まれているかもしれませんが、大多数は実際の利用者により投稿されたものです。それらを参照し、評判の良いところを選ぶようにするだけでもこうした自称に遭遇してしまうリスクは軽減することができます。

 レビューや口コミを参照するときは、業者の自社ホームページを参照するのではなく、必ず口コミサイトやレビューサイトといったようにその業者とはかかわりのない外部のサイトを利用するようにしましょう。どうしても悪意のありなしに関わらず、自社ホームページ上だと自社の評価が上がる口コミを掲載しがちです。お客様の生の声が反映されているかどうかというのはなかなか判断しづらくなりますので、外部のサイトに記載されている口コミサイトを利用するように注意しましょう。

■最後に・・・


 孤独死の現場は年々増えており、社会問題とまで発展している現状、こうした遺品整理関連や特殊清掃関連の需要は軒並み右肩上がりといわれています。大変な作業を担ってくださるこうした業者の方々には感謝をしたいところではあるものの、どうしてもこうした事情背景に乗じた悪徳業者が存在するのも、残念ながら事実です。ご遺族からしても個人に対して経緯を払って行わなければならない作業でもありますし、そうした神聖な作業を利益目的でしか動かない粗雑な業者に誤って依頼してしまわないように、注意を払いたいところでもあります。

 そして、孤独死の現場は、ご自身が思われているよりも非常に身近に存在するということもぜひ認識しておいてください。興味本位で調べるのは不本意と思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、事故物件の検索サイトなどを見てみてください。事故や事件などに合わせて、孤独死の事案も非常に多く掲載されていますし、それらの物件が、実は自分が住んでいるところの近くに存在しているということも普通にあり得るのです。

 人間は誰しもが年を取ります。その時に、看取ってくれる家族や友人がいることは本当にうれしいことです。ですが、セルフネグレクトなどの問題なども相まって、社会からも隔絶され、自ら隔絶してしまい、人とのかかわりが疎遠になったまま亡くなってしまう方がどんどんと増えているのです。その背景には少子高齢化や核家族化が挙げられるといわれていますが、それらの事象事態は必ずしも悪いこととは一概には言えません。子供を授かる自由、授からない事由があるように、これらの事情背景は簡単な問題ではないのです。そうした問題の上にあるこうした孤独死・孤立死の問題には、真正面からではなくても身近にありうる問題なんだということを把握し、少し目を向けてみることも必要なのです。

 仕事や食事、睡眠のように毎日当たり前のように体験する行動とは大きく異なり、生きているうちに遭遇するかどうかもわからないレベルのイベントである孤独死。そうした問題に直面したとき、パニックを起こしてしまうことも珍しくありません。ですが、慌てふためくばかりではなく、落ち着いて、しっかりと対応が行えるように、こうした現場に直面したときにどうやって対応していけばいいかを知っているかどうかでもそのあとの作業や行動が非常にスムーズになります。どうしてもそれらの現場は凄惨であることも多いため、作業や処理が早いにこしたこともありません。賃貸物件だとしたら大家からしても次の貸し出しのタイミングなどもありますので、可及的速やかに対応をしたいと思うところです。おろそかにできない対応である反面、急がれる対応でもあるため、そうしたそれぞれの立場の事情背景に対して対処できるように、発見時の初動から業者選び、処理方法をしっかりと把握し、いざというときに対して万全の備えをもっていていただければと思います。